世田谷区・高津区で活動する少年野球チーム「パイラスアカデミー世田谷」は、少年野球(学童野球)世代の子どもたちやその親に対して、野球を通じて考える力や決断する力の大事さを教えています。今回は野球イベント会社を立ち上げた高松隆太さんに、元プロ野球選手と一緒に働く喜びを聞きました。

野球イベント会社を設立するまでの道筋

小学校1年生の時に、兄の応援をしに地元の少年野球チームの見学に行ったことがきっかけで、野球を始めました。中学校では軟式野球部に入り、高校では神奈川県立市ヶ尾高校の硬式野球部で野球をプレーしました。

その後は東海大学に進学しましたが、高校で肘を壊していたため野球をプレイヤーとして本気で続けるという選択肢はありませんでした。それでも、地元の草野球チームや軟式野球サークルでプレーを続け、大学最後の2年間は、学生コーチとして母校の野球部の練習や遠征の手伝いをしました。

大学卒業後はゴルフ用品店に就職し、ゴルフクラブの販売や修理の仕事に就きます。ですが、ある時工房で作業をしている最中に、仕事に対してワクワクを感じていないことに気が付きました。

その一方で高校時代は、名門野球部に憧れて自主的にジムに通ってトレーニングをし、独学で栄養学を勉強するなど、大好きな野球では努力を積み重ねていたことを思い出したのです。それが、ゴルフの仕事ではポジティブに行動して結果を出すことができていませんでした。

高校時代のように、好きな野球を継続して仕事にすることができないか。そう思い、野球ファン向けに千葉ロッテマリーンズの応援ブログを立ち上げます。ほぼ毎日、半年以上にわたり書き続けて300記事を投稿すると、月に5万回読まれるまでの実績が積み上がりました。

今度は野球ファンの喜んでいる顔を直接見たいと思い、野球イベントの開催に挑戦します。やるからにはゲストが必要だと考えて、ゴルフ用品店の仕事で出会った元プロ野球選手であるGG佐藤さんの顔が浮かび、イベントへの参加をオファーしました。本人から了承を得て、イベントの開催に至ります。

元プロ野球選手と開催する野球イベントとは

私が力を入れているのは、元プロ野球選手のセカンドキャリアを応援するためのイベント開催です。元プロ野球選手は、現役時代はファンに夢を与えていた一方で、引退後のキャリアで苦労している人もいます。それをネガティブなトーンではなく、プロ野球を引退した今、何を考えていて将来はどんなものにチャレンジしたいのか。そんなポジティブな話をファン向けに熱く語ってもらうための場にしています。

GG佐藤さんもサックスやアートを始めるなど色々挑戦していますが、野球のように燃え上がるものが見つからないと苦労されています。野球イベントに参加して、ファンの方の前でそうした挑戦の話をすると、元プロ野球選手にとっても何か気付きがあるようです。イベント企画を通じて、そのヒントを一緒に見つける手伝いをしていきたいです。

今は周りの方からのご紹介で、岡本篤志さんや川崎憲次郎さん、米野智人さんといった元プロ野球選手の輪が広がっています。

米野智人さんでいえば、同じく元プロ野球選手の古木克明さんとの対談企画を開催したのですが、そのイベント企画がきっかけで、古木さんが立ち上げた「The Baseball Surfer」というアパレルブランドに米野さんがモデルとして参加するなど、別の仕事にもつながったようです。イベントを企画することによって、元プロ野球選手同士をつなぐハブとしての仕事にもなり得るのかもしれません。

現在は野球ファン向けのイベント開催が主な仕事ですが、今後はキャリア支援にも積極的に携わっていきます。他にもそうしたイベントに来てくださるコアな野球ファンの方向けに、昨年からオンラインコミュニティもオープンしています。

野球イベント会社の仕事内容

イベント会社の仕事は、イベントの企画・制作・運営がメインです。主催イベントのタイトルやテーマ設定を考え、デザイナーと打ち合わせをしてイベントの募集ページを作ります。今はオンラインイベントの案件が増えていますが、そのノウハウを生かして、他社のイベントのオンライン配信をサポートする業務も行っています。

これまで100回以上のイベントを主催してきました。イベントを企画すると、関係各所とのやりとりが頻繁に行われるので、電話やメールといった連絡ツールでのやり取りをずっと行っています。コロナの前までは、常に月3〜4回のイベントを企画し、多い時は月10本のイベントを行っていました。

野球イベント会社を立ち上げられた理由

私が野球イベント会社を立ち上げられたのは、人生を振り返る中で、「行動を起こさないと何も始まらない」ことに自分自身で気が付いたからです。思えば、社会人になった直後は仕事に燃えていませんでした。夢も希望もなく、仕事にワクワクすることができていませんでした。

ポジティブな結果であろうと、ネガティブな結果であろうと、それを導くのは自分自身の行動次第です。元プロ野球選手へのオファーを直々に図々しくお願いできたからこそ、今の自分があります。

少年野球の子どもたちに向けたメッセージ

少年野球の子どもたちには、野球を楽しんで欲しいと思います。別に野球ではないスポーツでも良いと思います。大好きな友達と、目の前のことにワクワクしながら取り組んでください。

私が小学生の時に、入っていた少年野球チームに怖いコーチがいました。コーチの動きや視線を気にして野球をしていたため、野球が楽しくなかった時期も正直ありました。時間はあっという間に過ぎるものなので、今一緒にいる友達や仲間と、楽しく、思い切ってプレーして欲しいなと思います。

(写真提供:高松隆太さん)

取材協力:高松隆太(たかまつ・りゅうた/1987年生まれ。神奈川県横浜市出身。小学校から高校まで野球をプレー。東海大学体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科卒業後、ゴルフ用品店チェーン企業に就職。2015年11月から、「元プロ野球選手のセカンドキャリアの応援」をコンセプトとした野球イベントを定期的に開催。2018年7月、株式会社IforCを設立。スポーツイベントの企画運営、野球ファンコミュニティ「ウッチャエ」の運営、元プロ野球選手のセカンドキャリア支援を目的とした有料職業紹介事業を展開している。)