世田谷区・高津区で活動する少年野球チーム「パイラスアカデミー世田谷」は、少年野球(学童野球)世代の子どもたちやその親に対して、職業紹介を通じて野球の魅力を伝えています。今回はフリーカメラマンとして野球の写真を撮影し続ける武山智史さんに、カメラマンの仕事内容を聞きました。

カメラマンの目指し方

新聞や雑誌の専属カメラマンとして働いている人は、大学の写真学科や写真の専門学校出身者が多いです。フリーカメラマンになる場合は、新聞や雑誌を扱う会社に所属してから独立するケースが一般的です。 

そういう意味では、新聞社や雑誌社に勤めず、フリーカメラマンになった私の経歴はイレギュラーかもしれません。

小学校から高校まで野球をやっていた私は、スポーツライターになることを将来の夢に掲げ、高校卒業後に今はもうない日本ジャーナリスト専門学校に入学しました。初めてカメラと出会ったのは、専門学校での写真実習です。専門学校を出てからは、スポーツ新聞社のアルバイトをと並行してスポーツライターである小林信也さんに師事し、学び始めました。

そこで私が撮影した写真を見た小林さんに、「ライターよりカメラマンでやっていった方が良い」と言われたことがきっかけとなり、カメラマンに転向しました。それが2004年のことで、以来カメラマンとして活動を続けています。

カメラマンの働き方

フリーカメラマンの場合は、雑誌やウェブメディアから撮影の依頼を受けて、取材や撮影することが一般的です。 

フリーカメラマンの仕事のスケジュールは、日によって大きく変わります。高校野球の試合撮影を例に挙げると、10時に第一試合が開始する場合は、場所取りのために開始の1時間半〜2時間前までに球場に入ります。午後からの第二試合を撮影して、急ぎの仕事だと近くの喫茶店に立ち寄って写真の選別やデータ送信を済まし、夕方18〜19時ごろに帰宅します。

カメラマンのモチベーション

カメラマンとして働くモチベーションは、好きな写真に携われていることだと思います。一方で、「最高の一枚が撮影できた」という感覚は未だにありません。喜劇王と呼ばれたチャップリンが、「あなたの最高傑作はなんですか?」と問われたときに「The next one(次の作品だ)」と答えたように、カメラマンも常に「次の一枚を求めて撮影し続けています」

もちろん、思い出深い写真もあります。例えば、横浜高校の名将である渡辺元智監督が勇退した年の夏の神奈川大会。決勝戦では、横浜高校と東海大相模高校が戦い、東海大相模が勝ちました。渡辺監督の最後の囲み取材には、たくさんの記者が集まりましたが、そこに東海大相模の門馬敬治監督がやってきて私の目の前で握手をしたのです。その瞬間を撮影した一枚はカメラマンとして思い出深いですし、さらに東海大相模が甲子園大会で全国制覇するというストーリーにもつながります。 

フリーカメラマンやライターとして働く上では、新聞社や雑誌社から仕事を受けることが多いため、仕事が突然なくなる怖さがあります。コロナ禍で緊急事態宣言が出たことで、なくなってしまった仕事もあります。だからこそフリーカメラマンは、自分から発信していくことが大事です。私も地元の新潟県長岡市で毎年写真展を開催したり、ラジオアプリを通じた情報発信を始めたりしています。

カメラマンに必要なスキルや特性 

カメラマンを目指すなら、早めにカメラを触っていたほうが良いでしょう。カメラマンには、良い瞬間を取り逃がさないための洞察力や先を読む力が求められます。また、カメラマンは望遠レンズを使うことが多く、視野が狭くなりがちなので、全体を俯瞰して見る力も大事です。

先を読む力で例を挙げると、屋外で野球の試合を撮影する場合は、カメラマンは太陽がどう動くかを意識して場所取りしています。一般的に、野球場はレフト側からライト側に太陽が移動するようになっているので、午前中は三塁側のスタンドから撮影し、午後は一塁側から撮影することを意識して場所を取るという具合に先を読みます。 

他にも、Photoshopなどの加工ソフトを扱うスキルが確実に必要になります。これは専門学校など学校に通えば習いますが、技術が進歩するのにあわせて、日々勉強することが求められます。

少年野球の子どもたちに向けたメッセージ

私はカメラマンと同時にスポーツ記事のライターとしても働いていますが、「写真×映像」や「写真×記事執筆」というように、これからの時代はカメラマンも二つ以上のスキルを組み合わせて働くことが求められます。 

少年野球の子どもたちも野球だけではなく、ラグビーやサッカー、スキーといった色々なスポーツを経験して、自分の可能性を探ってほしいです。高校野球部の生徒が、部員数が少ないサッカー部の助っ人に出るという話もあります。これから先、色々なスポーツを掛け持ちすることが徐々にスタンダードになるかもしれません。

取材協力

武山智史(たけやま・さとし/1980年生まれ。新潟県長岡市出身。小学校から高校まで野球部に所属。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、長岡市出身のスポーツライター・小林信也氏に師事。スポーツライターを目指す過程で、カメラマンに転向し写真をメインに活動。アマチュア野球を中心に撮影、取材を行う。2016年1月より、地元長岡市内で個展「グラウンドの主役たち」を毎年開催している)
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