世田谷区・高津区で活動する少年野球チーム「パイラスアカデミー世田谷」は、少年野球(学童野球)世代の子どもたちやその親に対して、職業紹介を通じて野球の魅力を伝えています。今回はプロ野球(NPB)の元審判員に、審判員の目指し方や仕事内容を聞きました。

プロ野球審判員の目指し方

プロ野球審判員になるためには、日本野球機構(NPB)が主催しているアンパイア・スクールを受験する必要があります。以前までは、プロ野球審判員は毎年募集しているわけではなく、偶に新聞広告などに求人が出ていて、それを見つけた人が応募し試験を受け採用されるという世界でした。ただ、スクールが誕生した2013年以降は、この試験を受けて合格しないとプロ野球審判員にはなれません。

試験は書類選考から始まります。100人以上の応募者の中から、毎回60人程度が書類選考を通過します。選考を通過した人は、プロ野球チームの2軍球場の近くに1週間、現役のプロ野球審判員と泊まり込んで実技試験を受けます。年長者もいますが、受験者は高卒以上(卒業見込みを含む)の18〜22歳くらいの年齢の人が多数を占めます。

スクールでは主に2人制を学び、朝にグランドに入り、夕方まで実技練習を行い、夜にはルールの座学や小テストの時間があります。最終日前日に2人1組の試合形式の最終テストがあり、最終日には面接を受けて、1週間のスクールが修了します。

この実技試験を合格した6人程度の人が、今度はプロ野球の春季キャンプと同時に行われる二次試験に進みます。各球団のキャンプを訪問して、ブルペンや紅白戦でトレーニングを積み、最終的に2〜4人が研修審判員として晴れて採用となります。(第6回以降はキャンプでの最終試験は行っていません)

プロ野球の研修審判員の働き方

プロ野球の研修審判員とは、言葉の通りプロ野球審判員の研修生であり、1〜2年間独立リーグに派遣されて審判員としての現場経験を積んでいきます。他にも、プロ野球の3軍の試合なども担当します。

審判員の働き方ですが、デイゲームかナイターゲームかで生活リズムが違いますが、だいたい試合開始の3時間前に球場に入ります。ブルペンに行ったり、トレーニングしたり軽食を取ったりして、1時間前になると球団からメンバー表が届くので、不備がないかをチェックして書き写します。その後で試合に臨み、試合終了後は審判員同士で試合中に起きた出来事などを確認し合うミーティングを行い、次の試合に備えます。

また、研修審判員は毎年10月に開催されるフェニックス・リーグを担当しますが、ここが審判員としての素質が問われる実質的な試験になります。認められれば研修審判員から育成審判員として昇格となります。この育成審判員に上がるのが難しく、研修審判員のうち1人しか昇格しない年もあります。

育成審判員はプロ野球の2軍の試合を担当することができます。そこでの働きぶりが認められれば、本契約となり1軍の試合を担当する資格を手にすることになります。ですが、その先も数年間は2軍の審判がメインであり、ある程度の経験を積むと1軍での球審が割り当てられます。そこからまた1軍の塁審や2軍で経験を重ね、1軍に定着するかどうかといった形です。

プロ野球審判員のやりがいと楽しさ

プロ野球審判員の一番のやりがいは、プロ野球のグラウンドに立って仕事をしているということです。また、プロ野球審判員はもともと野球をやっている人が多く、プロ野球選手と同じグランドに立ち、一流のプレーを見てそれを自分が判定しているということもやりがいの一つかと思います。

経験を積んでいくと、判定に関して選手や監督から抗議が来ることがあります。いつも自信を持って判定をしますが、常に「もう少しこうやって伝えるべきだった」「こういう風に見ていれば説得力があったのではないか」という反省をすることもあり、向上心を持ち続け、成長できる仕事です。

プロ野球審判員に向いている人とは

プロ野球の審判員は、プレイを判定する時は基本1人です。ただし、審判は4人や6人のチームを組むため、審判員同士の信頼はもちろん、一定のコミュニケーションが求められます。プロ野球審判員を務めるにあたり、協調性が大事です。

また、野球経験もあったほうがいいと思います。打った瞬間にボールがどこへ飛ぶのか、どういうプレイが起こりそうなのかをすぐに判断できることが大事だからです。審判員がピッチャーに返球することもありますので、しっかりとしたボールを投げられるとチームからの信頼も勝ち取ることもできます。

ルールを司る審判は、身のこなしも整っていないといけません。審判着の着方や所作、礼儀や敬語をしっかり学びそれを発揮することも求められます。

少年野球の子どもたちにメッセージ

今でも少年野球大会の運営に携わっています。その中で感じるのは、今の少年野球の子どもたちは指導者に「ああしろこうしろ」と言われたことを忠実にこなすだけで、野球を楽しむことを忘れている気がしています。

まず、野球を楽しむ気持ちが大事です。楽しもうとすると、野球のルールやどんなプレーをするべきかを自ずと勉強するようになり、上達していくと思っています。また、自分の少年野球チームにいる指導者に言われたことだけが正解と思わずに、他の野球アカデミーのコーチなどたくさん人の話を聞いてください。そうすれば、色々な選択肢が見えてくると思います。