バントは日本の野球の戦略でも最も身近な戦略の一つです。

バントは他の戦略と比べてもルールがシンプルかつ高度な技術を要求されない為、少年野球からプロ野球と幅広い世代で活用されます。また、国際的に日本はバント大国とも呼ばれることがしばしばあるので、今回はそのバントについての用語解説、バントの記録、日米に置けるバントの比較をを紹介します。

バントとは? 

バントとは、バットスイングせず、打球を内野に緩く転がるように当てることを指さします。

バントの仕方

バントの仕方は、バットを両手に持ち、バッターは体の向きを投手に正対させ、右バッターなら右手、左バッターなら左手ををバットの太い部分(バットの芯のほう)に添えて、地面と平行になるように構えます。
バットは振らずボールに当てるだけにします。

バントで意識すべきこと

  1. バットの角度(フライを上げないこと)
  2. 転がるボールの勢いを可能な限り弱めること
  3. 守備の選手(内野手)からなるべく離れた場所にゴロを転がすこと
  4. ストライクのみをバントすること

バントの種類

バントは大きく5つの種類に分けることができます。状況に応じて使い分けられることが大切になります。

送りバント

送りバントは、自分を犠牲にし、塁上にいる味方のランナーを次の塁へ進めるバントのことを意味します。また、一般的に送りバントは犠牲バントや犠打といわれ、他のバントの中でも最も多く活用されるバントです。
送りバントはノーアウト一塁、ノーアウト一・二塁、ノーアウト二塁の場合、またはワンアウトの場合で、一点が欲しい場面において、使われる戦術です。

セーフティーバント

セーフティバントは、バントで出塁しようとするバントを意味します。

セーフティバントは足の速い選手が一塁線や三塁線上にボールを転がし、内野安打を狙う戦術です。

スクイズバント

スクイズバントは、自分を犠牲にし三塁にいるランナーをホームに生還させるバントを意味します。

スクイズは主にノーアウトまたはワンアウトで三塁にランナーがいる場合、一点を取る為の戦術です。

三塁にいるランナーはピッチャーが投球動作に入ると同時にホームベース向かって走りだすため打者はどんなボールでもバントする必要があります。

プッシュバント

プッシュバントは、送りバントのように、打球の勢い抑えることはせず、バットの芯にボールを当てて、ボールを押し出し勢いのあるゴロを転がすバントです。

プッシュバントは守備側がバントを防ぐ為にバッターに対してプレッシャーをかけ前進している時の裏をかいた戦術です。これは送りバント、セーフティーバント、スクイズバントにも活用されることがあります。

スリーバント

スリーバントだけは先ほどの4つとは異なり、決まったルールがあります。

スリーバントとは、ツーストライクからのバントがファールになった場合、バッターはアウトになり、記録上三振となります。

送りバントの記録

送りバントはセ・リーグとパ・リーグ、またMLBどのリーグにおいても近年減少傾向にあります。

送りバント【両リーグ編】

送りバントの数は2011年から減少傾向にあり、2011年の1773犠打から2020年の904犠打と半減しています。

また、セ・リーグとパ・リーグにおけるバントの優位性の様なものは見ることができず、年によってバントの多さが違います。

送りバント【セ・リーグ編】

送りバントの数は2011年に911犠打あったのが、2020年には406犠打と半減しています。

また、送りバントの多いチームは年によって違いますが、過去10シーズンの犠打の平均が最も多かったのが128犠打の広島東洋カープとなります。

送りバント【パ・リーグ編】

送りバントの数は、2011年の863犠打から2020年547犠打と、セ・リーグ同様パ・リーグでも減少傾向にあります。

また、過去10シーズンの犠打の平均が最も多かったチームは131犠打のオリックス・バッファローズとなります。

送りバント【個人編】

送りバントの記録は、バントの神様と称される川相昌弘選手が533犠打を達成しました。533犠打は日本記録だけならず、世界記録で未だ破られていない記録です。

順位選手名所属チーム送りバント出場試合数
1川相昌弘読売ジャイアンツ533    1,909
2平野謙阪神タイガース451    1,683
3宮本慎也東京ヤクルトスワローズ408    2,162
4伊東勤埼玉西武ライオンズ305    2,379
5今宮健太福岡ソフトバンクホークス304    1,099
※2020年シーズン終了時点の記録

送りバント【日米編】

送りバントは日本とアメリカにおいて大きく違いがあります。

過去15シーズンの一球団当たりの一試合の平均犠打数を比較する2009年は0.34と3試合に一回の送りバントをされていますが、それ以降バントが成される頻度は日本が高く、2011年に日本は2試合に一回のバントがされるほど高くなっています。

しかし、セイバーメトリクスにより送りバントは①得点期待値の減少と②得点確率の低下の二つの理由から送りバントは効果的な戦略ではないと証明されたのです。

その為、2020年の一球団あたりの一試合平均犠打数の記録をみると、NPBは0.21と5試合に一回の送りバントがされ、MLBでは0.07と14試合に一回の送りバントと過去と比較をすると大きく減少していることが分かります。

また、セイバーメトリクスにおいてバントは効果的な戦略でないとされていながらで証明されてはいるもNPBのバントはアメリカの4年前とほぼ同じ水準にあります。

※NPBにおける2004年以前の送りバントの記録の取得が不可

バントは日本の文化、犠牲の精神と調和する(まとめ)

バントには4種類のバントがあることをご紹介しました。その中でも送りバントがバントの多くをが送りバントになります。

送りバントは近年日米問わず減少傾向にあることが分かります。これは、セイバーメトリクスの観点でみると効果的な戦略ではないとされていることが大きく影響を与えていそうです。しかしバントは、日本の野球界において今もなお根強く残るで一つの戦略で、現在も多用されていることが分かります。

これはもしかすると、世界からみた日本の文化の特徴でもある自己犠牲の精神、つまりチームメイトの為に自分を捧げるといった事なのかもしれません。科学的にバントは有効的ではないとされますが、それでもバントを続ける日本の野球のいいところかも知れないです。

ちなみに、バントを英語で…

送りバントは英語でsacrificed bunt (サクリファイスバント)と言います。

自分が犠牲になるバントという意味から犠牲を意味するsacrificed が使われています。