ヒットエンドランは高校野球やプロ野球で多く使われる戦術の一つで、野球中継を通じて一度は耳にしたことのあるフレーズではないでしょうか。

今回はヒットエンドランとは何か、プレー上のメリット・デメリット、印象的な試合などを動画を使って解説していきます。野球を戦術的側面から観ることで、新しい野球の楽しみ方を知ってもらえたら何よりです。

ヒットエンドランとは

ヒットエンドランとは、塁上にいるランナーが盗塁をし、バッターはストライクやボールに関わらず必ず投球をバットに当てる戦術です。

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ヒットエンドランの目的は

ヒットエンドランの目的は、塁上にいるランナーを次の塁へと進塁させる手助けをすることです。

そのため、ヒットエンドランはバントと同じ目的を持ちます。

またヒットエンドランとバントの唯一違いは、ヒットエンドランはバッターも出塁しようと試みる、バントは自分が犠牲になることです。

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ヒットエンドランのメリットとデメリット

ヒットエンドランにはメリットとデメリットが混在します。

ヒットエンドランが成功すればチャンス拡大となり、攻撃側のチームに良い流れをもたらします。一方で、失敗をすれば守備側のチームに流れが傾くこともあります。そのため、チームを指揮する監督の状況判断が大切になります。

ヒットエンドランのメリット

ヒットエンドランの遂行するメリットは大きく次の4つあります。

  1. ランナーを進塁させやすい
  2. ヒットの可能性が広がる
  3. チャンス拡大
  4. ダブルプレーを回避しやすい

それぞれ解説していきます。

ランナーを進塁させやすい

ヒットエンドランは、塁上にいるランナーは投球と同時にスタートを切るため、より早く次の塁へと到達しやすくなります。

ヒットの可能性が広がる

ヒットエンドランは、ランナーが投球と同時にスタートを切るため、守備側のチームは盗塁だと認識をし盗塁を阻止しようとベースカバーに入ります。そうすることで、ヒットゾーンが広くなりヒットが打ちやすくなります。

チャンス拡大

塁上にいるランナーは投球と同時にスタートするため、バッターがヒットを打った場合、より先の塁へと進塁がしやすくなります。

ダブルプレーを回避しやすい

塁上にいるランナーは投球と同時にスタートするため、野手がボールを捕球した時点でランナーは既に次の塁の近くにいることから、ダブルプレーを回避しやすくなります。

ヒットエンドランのデメリット

ヒットエンドランのデメリットは大きく次の2つあります。

  1. 盗塁アウト
  2. ダブルプレーの可能性

こちらも同様に解説していきます。

盗塁アウト

バッターが空振りまたは相手がヒットエンドランのサインを見破ってウェストボールを投じた場合、盗塁を阻止される可能性が高くなります。

ウェストボールとはピッチャーがバッターを打ち取るために投げるボール球のことを指します。日本語では、「捨て球」「遊び球」「釣り球」「見せ球」などともいわれます。

ダブルプレーの可能性

バッターがフライもしくはライナーを打つとランナーは帰塁する必要があるため、打った場所や打球の速度によってはランナーが帰塁できずダブルプレーになることがあります。

また、ツーストライク時でのヒットエンドランで、バッターが空振り三振、ランナーが盗塁死をすることで起こるダブルプレーもあります。この場合のダブルプレーを三振ゲッツーといいます。

ヒットエンドランを使うタイミング

前述した通り、ヒットエンドランの目的はランナーを次の塁へと進塁させることです。
ヒットエンドランを使うタイミングはランナー、バッター、試合状況などによって変わってきます。主に次の4つの状況があります。

  • ランナーを進めたい状況
  • バッターの状況
  • 試合の状況
  • カウントの状況

それぞれの状況を見ていきましょう。

ランナーの状況

出塁しているランナーの足が盗塁ができるほど速くないが、次塁に進めたいとき。

バッターの状況

・消極的なバッター(際どいコースに手を出さない)に積極的にストライクを打ちにいって欲しいとき。

・ランナーを次の塁に進ませたいが、バッターのバントが上手くないとき。

試合の状況

・試合が膠着状態で、ゲームの流れを変えたいとき。
・最悪ランナーを次の塁へと進められればいいが、あわゆくば打った打球がヒットになって欲しいとき。

カウントの状況

ヒットエンドランを遂行する際、バッターとランナーがそれぞれ注意すべきことが大きく分けて2つずつあります。

ヒットエンドランの注意点

ヒットエンドランを遂行する際、バッターとランナーがそれぞれ注意すべきことが大きく分けて2つずつあります。

バッターが注意すべきこと

  1. ヒットエンドランにおいて、バッターはストライクやボール(確実にボールと判断が出来る球は打たない)に関わらず全てのボールを打つこと。
  2. ヒットエンドランは全てゴロで打ち返すこと。

ランナー注意すべきこと

  1. ヒットエンドランの際、ランナーは盗塁をすること。
  2. ヒットエンドラン際、盗塁のスタートを切ると同時に、打球の種別(ゴロ、ライナー、フライ)を判断すること。

ヒットエンドランの応用

ヒットエンドランには応用術が3つあります。

バントエンドラン

バントエンドランは、ヒットエンドランと同じくランナーは投球と同時にスタートを切りますが、バッターは打つのではなくバントをします。

また、バントエンドランはスクイズと同じになります。

バスターエンドラン

バスターエンドランは、ヒットエンドランと同じくランナーは投球と同時にスタートを切りますが、バッターはバントの構えから打ちます。

ランエンドヒット

ランエンドヒットは、ランナーは投球と同時にスタートを切り、バッターはランナーのスタートによる盗塁成功の確率、球種、コースを見て打つか打たないかの判断をします。

ヒットエンドランのスゴさが分かる試合

ヒットエンドランには、着実にランナーを次の塁に進める送りバントや盗塁などにない、一気にチャンスを拡大する奇襲攻撃になります。そのヒットエンドランの凄さが分かる試合を一つご紹介します。

千葉ロッテ、二者連続のヒットエンドラン

2006年交流戦のロッテ対巨人の一戦、試合は4対4同点で迎えた延長10表。

当時千葉ロッテの監督のボビー・バレンタイン監督は初球からヒットエンドランを仕掛けるもファールになり、3球後に再びヒットエンドラン遂行し、見事ノーアウト1・3塁の形を作ることに成功します。

更にこれだけで終わることなく、続く福浦選手1ボール1ストライクのカウントからヒットエンドランを遂行し、再びノーアウト1・3塁の形を作ることに成功します。

ヒットエンドランは攻撃的な戦略

ヒットエンドラン、それは試合を勝つに当たり攻撃のチームが採る攻撃的戦略の一つです。ヒットエンドランのメリットとデメリット、ヒットエンドランを活用するタイミングなどを理解した上で、「もし自分が監督ならどんな采配をするのか」を考えて試合を観てみるのも野球観戦の楽しみ方の一つです。

野球には考えてプレーをする要素がたくさん詰まっています。監督の指示に従いプレーすることもチームスポーツをするうえで大切ですが、どうして監督がこのサインを出したのかを理解しながらプレーしてもらえると嬉しいです。

ちなみに…ヒットエンドランを英語で?

ヒットエンドランを英語で、「Hit and Run」で、バッターは打つ意味である「Hit」、ランナーは走るの「Run」です。