少年野球のアスレティックトレーナーとは|子どもたちを心身ともに支えるの仕事

少年野球のアスレティックトレーナーとは|子どもたちを心身ともに支えるの仕事

2020年10月18日
ゲストトーク【野球談議】

東京都世田谷区にある野球教室のPyrus Baseballでは、少年野球(学童野球)世代の子どもたちやその親に対して、野球を通じて考える力や決断する力の大事さを教えています。

今回は、横浜ベースボール整骨院 医科学研究所の吉田干城院長から、スポーツ選手のトレーニングやコンディショニングの調整まで幅広くサポートする「アスレティックトレーナー」という仕事について教えてもらいます。

取材協力

吉田干城(よしだ・たてき/横浜ベースボール整骨院 医科学研究所院長、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、柔道整復師。小学1年生から硬式野球を始め、小学4年生の時から野球肘(内側骨端核障害分節化)に悩まされる。桐光学園から日本体育大学に進学するも、肘の靭帯を完全断裂して野球を引退。引退後すぐ、高校生の時に通院していた杉田接骨院(杉田一寿)の元で修業。同時期に、横浜ベイスターズのアシスタントトレーナーに就任。2009年に横浜ベースボール整骨院を開業)
≫横浜ベースボール整骨院

アスレティックトレーナーを目指すきっかけは自分の野球肘

私は小学1年生の時に硬式野球を始めましたが、小学4年生の時に野球肘(内側骨端核障害分節化)になって以来、野球人生においてずっと怪我に泣かされてきました。もともとはプロ野球選手しか目指していませんでしたが、高校野球でも靭帯損傷や疲労骨折を経験し、この身体ではプロ野球選手にはなれないかもしれないと感じていました。

また、高校野球で怪我をした時、偶然出会った杉田整骨院の杉田一寿先生が心と身体の両面をサポートしてくれたことが、野球人として励みになりました。それもあり、高校野球を引退した時、大学に進学して野球を続けるかそれともトレーナーの道に進むか非常に悩みました。

結果、日本体育大学に進学することに決めましたが、日本体育大学では野球推薦で入学してもトレーナーや体育の先生になる道を選択できたという点が進学の決め手でした。大学野球で内側の靭帯を損傷してしまい、野球人としてプレーができなくなった時に、今度は自分が怪我で悩んでいる野球人を支える道に進むことに決めました。自分自身が野球肘で苦い経験をしたからこそ、アスレティックトレーナーとしての今の私がいるのです。

トレーナーの種類や働き方は多種多様

トレーナーと一口に言っても、その定義や働き方は多種多様です。

その中でも、私はアスレティックトレーナーという仕事に就いています。

怪我をして病院で大きな手術を受けたアスリートは、まず日常生活への復帰が第一目標です。そのために、歩くや立つといった基本動作を回復させる仕事を理学療法士が担っています。さらにアスリートの場合は、日常生活に復帰するだけではなく、そこから競技復帰を目指すことになります。そのサポートを担うのがアスレティックトレーナーです。また、野球チームに所属しているアスレティックトレーナーの場合は、怪我予防のための指導も業務として求められます。

医療面のリハビリを担うのが理学療法士。その先のアスリートの現場復帰を担うのがアスレティックトレーナー。さらにもう一つ、トレーニングコーチとも呼ばれ、競技力向上のために筋力トレーニングを指導するストレングス&コンディショニングトレーナーもいて、トレーナーの種類は細分化されています。

アスレティックトレーナーになるには資格が必要

国家資格が必要な理学療法士とは違い、アスレティックトレーナーになるには、日本体育協会が設定している民間資格を取得する必要があります。

アスレティックトレーナーの資格を取得するには、年間で100人が受講できる専門の養成カリキュラムを修了するか、専門学校を卒業するかのどちらかが必要になります。

資格を取得済みのアスレティックトレーナーは、今も全国に3500人くらいしかおらず、決して生半可な気持ちではなれません。

アスレティックトレーナーのやりがいは復帰後の活躍報告

中学1年生の時に(肘の靭帯損傷の治療法である)トミー・ジョン手術を行い、中学2年生から私のところに治療に来ている選手がいます。その選手は、手術後の約1年間は投球すらできないつらい日々を過ごしました。しかし、そこから少しずつ投球できるようになり、現在は独立リーグのチームで140キロ台のボールを投げる中継ぎピッチャーとして活躍しています。

このように、選手とトレーナーが苦楽を共にしながら怪我を乗り越えていく課程こそ、アスレティックトレーナーとしての仕事のやりがいを感る瞬間だと思います。

少年野球で野球肘を根絶する取り組みが必要

児童期の子どもが野球肘になってしまうのは、身体が未熟という理由だけではなく、野球界が野球肘防止のための取り組みにフォーカスできていないという理由もあります。

この数年でようやく状況は変わりつつあります。ですが、今も「痛くてもプレーを続けるのが美学だ」という風潮があります。こうした風潮をなくして、野球肘を根絶していくことが野球界に求められています。